3.測定精度向上のための対策
幸い、イヤホンは大型のオーバーヘッド型のヘッドホンよりも遥かに小型軽量なので、比較的精度向上の対策が施しやすい。
今回はエージングによる音質変化の観測に特化して以下の対策を取ってみました。
あと、以下の準備をしている最中、「なんでこんなことしてるんだっけ?」と、時々我に返る感じもあったことも併せてご報告いたします。
(1)イヤホンとカプラを完全に固定してしまおう
・カプラとの結合が不安定となりがちなイヤチップを使わず、接着剤によりイヤホン本体とカプラの固定とシーリングを行った。・・・さよならK324P。
・カプラは変形しにくいよう、先端部の長さ15mmと短めにしたシリコンチューブを用いた(内径7mm、外径10mm)。
・カプラとマイクの結合は、結束バンドにより固定した。(マイク先端の径が8mmなので、シリコンチューブはギッチリはまってズレたりしませんけれど念のため)
なお、接着剤(コニシ株式会社「ボンド ウルトラ多用途S・U」)は完全に硬化するのを待ったのち(24時間)マイクへの取り付けを行った。
カプラの材料であるシリコンチューブは東急ハンズにて購入。10cm単位で買えるので便利。
(2)環境雑音と振動低減のため、防音室モドキに入れる
・簡易的な防音室モドキとして、(カメラの保管などに用いる)プラスチック製のドライボックスの内壁に防音材を貼り付けたもの(※)を使用。これにマイク+カプラ+イヤホンを収納した状態で測定を実施した。(ケーブルを通す穴あけ加工は必要)
・加えてマイクの下には防振と位置ズレ防止のため厚さ5mmの防振ゲルシート(「スーパーゲル」メーカ不明。東急ハンズにて購入)を敷いてみました。
なお、これらの対策によっても100Hz以下の低周波の雑音を大幅に低減することは出来ませんでしたとさ・・・とほほ。
(※)ドライボックスはナカバヤシ株式会社のDB-S1CDクリアブラックを使用、ヨドバシカメラで2,000円強だったと思います。また吸音材は「MINI-SONEX」をドライボックスの内壁全体に貼り付けた。

マイクの設置状態(フタをあけた状態)
シリコンチューブはマイク先端から15mm分伸びており、そこにイヤチップを取り除いたK324Pを接着しています。
チューブの長さによって観測される高域の音圧(特に10kHz超)がかなーり変化しますが、
今回はとにかく「少しでも動いたら負け」という観点から15mmと極端に短くしています。
(外耳道の長さからいって普通は25mm程度が妥当だとは思います。)
・・・・・・・っていうか、ものすごくバカっぽい気がしてきました。一体俺は何をしているのかと・・・。
(3)一時的な測定精度の悪化を把握し、誤った測定結果の解釈をしないようにする
・各測定時刻での測定精度確認のため5回同じ測定を繰り返し、記録に残すことにします。
セットアップはきちんとやったつもりでも、予期せぬ要因で偶発的に測定精度が悪化することも考えられます。測定精度の悪化をエージングの効果と誤って解釈してしまうことを防止する効果はあると思います。
(過去にFastTrackでちょっとあったりしました。精度悪化が起これば大概はすぐにわかりますれども。)
もちろん5回ではなく10回、20回と測った方が良いのですが、根性が無いことと、繰り返し測定をしているうちにエージングが進んでしまう可能性もあるのではないか?え?と言い訳じみた理由を考えてみた結果、妥協点として5回としました。(ちなみに自分の場合は5セット測るだけでも30分強の時間を要します。)
・加えて、ドライボックス内に簡易的な温度計と湿度計を設置し、各測定時刻の温度・湿度を記録に残すことにしました。
特に温度については音速に関連しますので(331.5 + 0.61t (m/s)。tは摂氏。ですね。)、カプラ内の定常波の状況変化などによって測定結果の誤差となるかもしれぬ、と思ったためです。
(4)測定装置のウォームアップ等を十分行って定常状態にしてから測定する
・測定する装置(マイク、ケーブル、PCを含む)については、セットアップとテスト的な測定(20分程度)を実施したのち、12時間以上程度放置してから、本番測定を開始しました。
カプラの材質はシリコンなので、マイク先端との形状が馴染むまでの時間がかかるかもしれない・・・か?などと迷ったので一応時間を置いてみました。
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