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【番外編】ER4シリーズのあれこれ測定

・・・まだやるの?
という声もあろうかと思いますが、ER-4シリーズに関して質問が何点かあり、

・測定結果
・その他適当な解釈など。

をUPしておこうかと思います。


お約束の忙しい人のための要約:

<ER-4Sと、ER-4P+ER4P-24の比較>
・ER-4Sの方が、高域の音圧が僅かに高い。(1〜10kHz辺りで最大1dB程度)

・位相、歪、ステップ応答については差はあまり無し。

・ただし、真偽は不明ながら付け加えるなら
 CSDを見るとER-4Sには8kHz部の共振がやや多い。ER-4Pは共振少ないように見える。ただし測定誤差の可能性高し。

・方向決定帯域により、1kHz以上の高域の量が多い、ER-4Sの方が前後方向に相当する音のスペクトラム変化に敏感、かも
しれない。(超弱気)


忙しくない方用は以下。

(なんだか、えらい脱線が多いので申し訳ないのですが・・・)


【1.測定条件】
(1)CLIOWin:
・サンプリングレート48kHz/16bit
・マイク:Earthworks M30
・出力アンプ:CLIOfw
・マイクアンプ:CLIOfw
・カプラー:シリコンチューブ 内径7.0mmφ/外形9.0mmφ トリプルフランジ先端からマイク先端までの間隔を12mmとなるようにセット。
・インピーダンス測定の出力:-40dB
・周波数特性測定時の刺激信号:Sinusodial
・周波数測定時の出力調整:1kHzにて-50dBVとなるように刺激信号の出力ゲインを調整。

(2)ARTA:
・サンプリングレート48kHz/16bit
・マイク:Earthworks M30
・出力アンプ:EDIROL FA-66(ヘッドホン出力端子)
・マイクアンプ:EDIROL FA-66(INPUT1)
・カプラー:シリコンチューブ 内径7.0mmφ/外形9.0mmφ トリプルフランジ先端からマイク先端までの間隔を12mmとなるようにセット。
・周波数特性測定時の刺激信号:Sweep(Sweep length=64k /Samp.Rate=48000 /Option="Center peak of impulse response")
・周波数応答測定:1/24octでスムージング処理
・周波数測定時の出力調整:入力ピーク電圧がおおよそ-15dBとなるように刺激信号の出力ゲインを調整。
 (※FA-66はアナログボリュームなので微小なゲイン合わせがあまり上手くいきませんでした)



まずはお約束の周波数特性(振幅)を測ってみましょう。

【2.周波数特性(振幅)比較】
CLIOWinによる測定
※1kHの出力がほぼ同一になるよう刺激信号のゲインをあわせています。

【図2−A】



【図2−B】

【俺考察1】
・50Hz以下の振幅のバラつきは、ドライバの個体差、カプラへの装着具合による誤差で本質的な相違ではないものと思われ。
・ER-4SとER-4Pの違いは【図2−A】のように、特に1kHz以上の高域がER-4Pの方が大人しい(1kHz〜10kHzの範囲で最大で5dB違い)。
・ER-4PにER4P-24を接続すると【図2−B】のように、ER-4Sとの周波数応答(振幅)の差異は最大1dB程度(1kHz〜10kHz)まで縮小。

【周波数応答(振幅)はER-4Sと、ER-4P+ER4P-24はほぼ同じ。1kHz〜10kHzで違いは最大1dB程度。】




次に、位相特性、歪、ステップ応答、CSD(累積スペクトラム減衰)※、インピーダンス特性を比べて見ましょう。

※CSDは、共振を観察する一つの方法で、長く尾を引いている周波数帯は何かの原因で共振が発生して過渡特性を悪くしていることが推測されます。

インピーダンス測定以外はARTAというオーディオ測定・分析ソフトを使ってみました。
このソフトはライセンス登録しないと(79ユーロとのこと:2009年2月9日現在)ファイルのセーブとロードが出来ませんが、それ以外はフル機能が使える(・・ハズ)。
グラフは美しいですし、カユイところに手が届く非常に強力なソフトであります。お勧めです。
2009/2月中にもアップデートがあるそうでワクワクであります。


【3.位相、歪、ステップ応答、CSD、インピーダンス】

【表3】
周波数、位相応答(音響) (紫線=ER-4Sの周波数応答【比較用】 歪み(音響) ステップ応答(音響) CSD インピーダンス特性(電気) 赤線=インピーダンス 灰色線=位相
ER-4S
ER-4P+
ER4P-24
 
ER-4P
ER-4B
【俺考察2】
・位相について:大きな差はないと見て良いように思います。
・歪(2次、3次、4次)について:僅か数dBで測定誤差程度とも言えそうですが、ER-4Sが2次、3次とも良好に見えます。
・ステップ応答:高域成分の多いER-4B以外は殆ど差なし。
・CSD:なぜかER-4Sについてだけ8kHz強の部分がなかなか減衰してくれない。これは測定誤差(何かのミス?)か個体差のように思えるのですが原因不明。それ以外の部分は明確な差なし。
・インピーダンス:ER-4S(DC抵抗105.8Ω)、ER-4P+ER4P-24(DC抵抗92.6Ω)で、ER-4Sの方が直流抵抗が13.2Ω程度高い
なおドライバ単体では若干の個体差程度の特性の差異しか無く(下図【表3−A】)、ER-4SもER-4Pも同じものと思われ。
・またER-4Bはケーブル内にコンデンサが入っており、1kHzあたりからケーブルのインピーダンスが低下する為、高域ほどドライバで流れる電流が増えて音圧を上げる仕組みあり(下図【表3−B】)。
 (コンデンサが入っている割には、自分が事前に予想したほどER-4Bの位相特性や歪率は悪くなってはいないようですね・・・)

【図3-A】
ドライバー単体のインピーダンス
ER-4S=赤(Ω)と白(Deg)、ER-4P=青(Ω)と黄色(Deg)

【図3-B】
ケーブル単体のインピーダンス(ステレオミニプラグの先端をショートさせてループ時のインピーダンスを測定)
インピーダンス=赤(Ω)、位相=灰色(Deg)
ER-4S ケーブル単体のインピーダンス(先端ショート時のループ抵抗)
ER-4P ケーブル単体のインピーダンス(先端ショート時のループ抵抗)
ER4P-24変換ケーブル単体のインピーダンス(先端ショート時のループ抵抗)
ER-4B ケーブル単体のインピーダンス(先端ショート時のループ抵抗)


ここでの俺的な最大の謎は
「なんでER4P-24に内蔵している抵抗を68Ω(この場合ER-4Sとの差-13.2Ω)ではなく、
 75Ω(この場合ER-4Sとの差-6.2Ω)、あるいは82Ω(この場合ER-4Sとの差+0.8Ω)にしなかったの?」
ということです。

憶測ですが、「68ΩにしとけばE6系列の抵抗から使えるし、大体合ってるからいいじゃん」・・・という事だったりして。
いや、単に憶測ですよ。


【4.音場感、方向感覚について】

上の1.〜3.までで、ER-4SとER-4P+ER4P-24の違いは、おおよそ・・

・ケーブルのインピーダンスがER-4Sの方が13.2Ω程高い。
・ゆえにER-4Sの方が、高域の音圧が僅かに高い。(1〜10kHz辺りで最大1dB程度)

真偽は不明ながら、付け加えるなら
・CSDを見るとER-4Sには8kHz部に共振あり。ただし測定誤差の可能性高し。

ということだと思います。

超簡単にまとめると「ER-4Sの方が高域の量が僅かに多い」と言えると思います。


では、高域の量が多いことと、方向感覚、音場感はどんな関係があるのでしょうか?

全然わかりません。

わかりませんが、勝手に憶測してみます。


ER-4シリーズの周波数特性については
EtymoticResearch社のサイトに説明があるように
diffuse-field[注1]で得られたKEMARダミーヘッドの周波数応答を基準として、
さらに一般のラウドスピーカー用に録音された音源の特性(10kHzで10dBブーストしている)を加味して、高域を落としてたものを
理想的な周波数特性として「Target curve」としている旨の説明があります。

ER-4シリーズのS/P/Bそれぞれの狙いとしては・・・
・ER-4S:上記「Target curve」を目指した製品

・ER-4B:ラウドスピーカー用音源対応のための高域ダウンをせずに、
純粋にdiffuse-field equalizationを適用した製品。
diffuse-field equalizationで録音された音源の観賞用。

・ER-4P:ポータブル機器での利用を前提として、音量の取りやすさと低域の相対的な音圧アップを狙った製品。

・・・と言うことだと思います。


あんまり複雑で難しいことを考えても何にも分からないので、状況を極端に単純化して
「真正面」と「真後ろ」の場合を見てみますと(下図4−A)

【図4-A】


この図は、ダミーヘッド鼓膜位置のマイクロホンが捉えた音源の周波数特性の変化を表します。[注2]
(実際はMITの無響室内で、スピーカーが該当の方向からインパルス信号を出してそれをダミーヘッドのマイクが拾った際の周波数応答)


このグラフによれば、主に900Hzから上の周波数で違いが大きいことが分かります。

よって、これをER-4Sと、ER-4PまたはER-4P+ER4P-24の関係に当てはめれば(図2−A、図2−B)
「(僅かかもしれませんが)1kHz以上の高域の量が多い、ER-4Sの方が前後方向に相当する音のスペクトラム変化に敏感」
・・・と言えなくもないような気もします。

「方向決定帯域」については、
googleブックでプレビュー可能な、この本(「よくわかる音響の基本と仕組み」/岩宮眞一郎 著)に分かりやすく書かれていますね。


左右方向やら上下やら音場全般については、自分には複雑すぎますので、どなたか賢いかたにお任せしたいかと思います。


以上


[注1]diffuse-field(diffuse sound field)とは:

ISO/IEC、JISの定義によれば・・・・
残響音場(reverberation sound field):音源から直接到達する音の影響が無視できる、残響室内の音場の部分。
(参考)音波が一様に分布し、その伝播方向がすべての方向に等確率であることが理想である。
このような理想的な音場が拡散音場(diffuse sound field)である。

・・・ということなので、free-field responseを測定するための(理想的には)直接音しか聴こえない無響室(anechoic chamber)とは
全く正反対の特性を持った音場と言えます。

おそらく理想的なdiffuse sound fieldに入ったら、反響だらけでどっちを向いても音源の場所を特定できない何とも異常な空間だと思います。

現実的には理想的なdiffuse sound field作ることはおそらく不可能だと思いますので、
(JISでは残響室の設計においても、100Hz以下の測定を行う場合には600立方m以上(!)という巨大な体積が推奨されている。)
各社でそれぞれ何らかの近似を行っているはずです。

また、測定に用いられるダミーヘッドや人間の被験者についても、各社が想定した「平均的、と思われる」数値を使っているはずであり、
(free-field equalizationについても同じですが)diffuse-field responseやequalizationについては、それほど厳密なものではないことが想像できる。

その証拠、といってはナンですが、
同じdiffuse-field equalizationに準じた、と言われるSennheiser HD650、あるいはbeyer DT770/990(あとDT800 monitor)、AKG K240 MonitorStudio、STAX Lambda Professionalは百歩譲って「同じような音」とする人が多いとしても、ER-4Bもdiffuse-field equalizationだから同じなんです!・・と言われても、控えめに言っても「・・・・無理だから」という反応ではないでしょうか?



蛇足ですが、ヘッドホンにおけるdiffuse-field equalizationについては、G.Theile,"Localization in the Superposed Sound Field",1980において提唱された方法で、「association model」という認知モデル(仮説)によるものです。
その仮説によれば、free-field equalization+ラウドスピーカー用の音源では、ヘッドホンでの再生では「Location-determining stage」という(頭の中の)逆関数が上手く働かず、次の「Gestalt-determining stage」で「線形歪」を発生させてしまい、頭内定位等の不自然さが際立ってしまう。この問題を解決するために「Gestalt-determining stage」で線形歪を発生させないdiffuse-field equalizationの方が良い。
詳細はG.Theile,"On the Standardization of the Frequency Response of Higi-Quality Studio Headphones",1986参照でね。じゃっ!
・・・・・とのこと。何がなんだか分かりませんけど。


[注2]
このグラフを見て、「なんだかER-4シリーズの周波数特性に近いなあ・・・」と思った方は鋭い。
上のEtymotic社のサイト内の説明でも、同じダミーヘッド(KEMAR)が使われているという記述があります。
こちらのMITのグラフはfree-field responseですが、diffuse-field responseも(違いはあれども)、極端に大きな相違ではないことを暗示しているように思えます。




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