[注1]diffuse-field(diffuse sound field)とは:
ISO/IEC、JISの定義によれば・・・・
残響音場(reverberation sound field):音源から直接到達する音の影響が無視できる、残響室内の音場の部分。
(参考)音波が一様に分布し、その伝播方向がすべての方向に等確率であることが理想である。
このような理想的な音場が拡散音場(diffuse sound field)である。
・・・ということなので、free-field responseを測定するための(理想的には)直接音しか聴こえない無響室(anechoic chamber)とは
全く正反対の特性を持った音場と言えます。
おそらく理想的なdiffuse sound fieldに入ったら、反響だらけでどっちを向いても音源の場所を特定できない何とも異常な空間だと思います。
現実的には理想的なdiffuse sound field作ることはおそらく不可能だと思いますので、
(JISでは残響室の設計においても、100Hz以下の測定を行う場合には600立方m以上(!)という巨大な体積が推奨されている。)
各社でそれぞれ何らかの近似を行っているはずです。
また、測定に用いられるダミーヘッドや人間の被験者についても、各社が想定した「平均的、と思われる」数値を使っているはずであり、
(free-field equalizationについても同じですが)diffuse-field responseやequalizationについては、それほど厳密なものではないことが想像できる。
その証拠、といってはナンですが、
同じdiffuse-field equalizationに準じた、と言われるSennheiser HD650、あるいはbeyer DT770/990(あとDT800 monitor)、AKG K240 MonitorStudio、STAX Lambda Professionalは百歩譲って「同じような音」とする人が多いとしても、ER-4Bもdiffuse-field equalizationだから同じなんです!・・と言われても、控えめに言っても「・・・・無理だから」という反応ではないでしょうか?
蛇足ですが、ヘッドホンにおけるdiffuse-field equalizationについては、G.Theile,"Localization in the Superposed Sound Field",1980において提唱された方法で、「association model」という認知モデル(仮説)によるものです。
その仮説によれば、free-field equalization+ラウドスピーカー用の音源では、ヘッドホンでの再生では「Location-determining stage」という(頭の中の)逆関数が上手く働かず、次の「Gestalt-determining stage」で「線形歪」を発生させてしまい、頭内定位等の不自然さが際立ってしまう。この問題を解決するために「Gestalt-determining stage」で線形歪を発生させないdiffuse-field equalizationの方が良い。
詳細はG.Theile,"On the Standardization of the Frequency Response of Higi-Quality Studio Headphones",1986参照でね。じゃっ!
・・・・・とのこと。何がなんだか分かりませんけど。
[注2]
このグラフを見て、「なんだかER-4シリーズの周波数特性に近いなあ・・・」と思った方は鋭い。
上のEtymotic社のサイト内の説明でも、同じダミーヘッド(KEMAR)が使われているという記述があります。
こちらのMITのグラフはfree-field responseですが、diffuse-field responseも(違いはあれども)、極端に大きな相違ではないことを暗示しているように思えます。
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